| 第12回:FTA交渉(下) 〈仕切り直しになったメキシコとのFTA交渉は、翌年の04年3月に、ようやく基本合意にこぎつけた〉 閣僚折衝は決裂したが、農水省は割合早く再始動し、翌月の11月には次官級協議を開始しました。10月の閣僚交渉までは課長級の交渉をしていたんだが、相手の女性がきつい人でね。今度は農牧省の次官が出てきて、現実的な議論ができるようになった。年が明けた1月の協議で合意にもっていけると確信できました。ところが、日本国内からは農業分野が降りないから交渉が進まない、もっと譲るべきだという声が上がっていた。国内調整の方が大変でしたよ。 メキシコのウサビアガ農牧相が3月のフーデックス(食品見本市)出席のため来日した時、表敬訪問を受けました。その時には「FTA交渉に関しては、もう話をする必要はない」という認識で、お互い一致した。私との会談後、ウサビアガが記者団に「今日、亀井農相と交渉はしていない」と答えたそうですが、「詰まっているので交渉をする必要がない」という意味に私は受け取りましたよ。 さて、障害と世間では思われた農業分野がまとまって、経済産業省の事務方があわただしく動いたようですね。それで何とか鉱工業品分野もまとまり、急きょ両国閣僚によるテレビ会談が組まれました。今振り返ると、メキシコとの交渉に時間がかかったのは、向こうがFTAをいくつも締結して交渉慣れしていたことと、国内向けに頑張って市場開放を求めているんだという姿勢を見せる必要があったんでしょう。前年10月の閣僚折衝の時も、ホテルの隣の部屋に関係団体の代表がいて相談にあずかっていましたからね。 〈メキシコの次にはアジア諸国との交渉が控えていた。農水省は対策本部を設けた〉 メキシコの経験から、交渉には的確な情報が必要だと痛感しました。特に重要なのは、生産者や民間企業も含めた現地の正確な情報です。だから農水省も対策本部を設置し、現地の商社などからさまざまなレベルの情報を得る体制を作ったのです。 世間では、農業を守ろうとするから交渉がうまくいかないと盛んに言われるが、目先の利益だけではなく、日本全体としての国益を考えないといけません。自給率や食料安保など農業の多面的機能まで含めて、国益のバランスを取る。このことが大切です。韓国やASEAN諸国との交渉が本格化しています。同じアジアの国々ですし、原則論ばかり主張せず、互譲の精神で誠意ある交渉をすることが、合意の近道だと思いますよ。 |
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